2007年にデビューした現行のR35GT-R
その名前には「スカイライン」はついていない。
日産が世界に誇るハイパフォーマンスカー、GT-R。
歴代GT-Rでも、5代目のR34までは、スカイラインの高性能バージョンという位置づけで「スカイラインGT-R」という車名だったが、
R35は「スカイライン」と決別し「日産GT-R」と名乗るようになった。
なぜ日産はGT-Rから「スカイライン」という名前を取ってしまったのか
真相はカルロス・ゴーン氏にインタビューでもさせてもらわないと語れないが、おおよそ次のような理由が考えられる。
1)「GT-R」という名の国際的な知名度
ご存じのとおり、「スカイライン」はR34まで、基本的に国内専用車種で輸出はされていなかった。
近年instagramなどのSNSの普及や、R32GT-Rがアメリカの輸入規制除外対象になる製造後25年経過に該当したため
より海外の人がGT-Rに触れる機会が増えてきた。
その中で気になるのがその呼び方。
instagramでも海外の人がGT-Rの写真や動画を投稿する際に「GT-R」や「R○○」、中には「Godzilla car」と呼ばれている投稿もあるが
「スカイライン」と呼ばれている投稿は極めて少ない。
世界戦略を考えると、ローカルネームの「スカイライン」ではなく、「日産GT-R」とした方が国際的な受けがよいと考えられたのだろう。
また「スカイライン」の型式は、6代目=R30以降、R31、R32、R33、R34と、「R●●」を継承してきたが、11代目のV35からは、V35、V36、V37と「V」にチェンジ。
独立したGT-Rは、「R35」の型式を与えられているので、必然的にスカイラインとは別の路線になった。
2)ハイクオリティセダンとスーパースポーツの両立の難しさ
ふたつ目の理由は、ポルシェなども凌駕する国産最強のハイパフォーマンスカーを開発するには、セダン=「スカイライン」ベースであることが足かせになってきたため。
歴代スカイラインGT-Rは、セダンベースの高性能車というのがアイデンティティだったわけだが、セダンにはセダンの要件があり、
近年ではノーマルで500PS超えのスポーツカーも珍しくなくなってきたため
セダンモデルの上級グレードとして世界のスーパースポーツと戦っていくのがいよいよ難しくなってきたと考えられる。
セダンの場合、居住性も重要、装備、質感もライバル車に引けを取るわけにはいかないし、乗り心地、静粛性、環境性能、そして価格といったことを考えると、
サーキットで世界のスポーツカーをやっつけるには、あまりにも条件が厳しくなる。
とくにV35スカイラインは、対米輸出車(インフィニティG35)として、アメリカでのヒットを狙ったクルマになった。
ヨーロッパ車のようにしなやかさを前面に打ち出し、あえてボディを捻るように設計。全体のしなやかさで曲がるよう設計されているので、
GT-Rのようなスポーツカーとはだいぶ隔たりがある。
こうした事情から、R35GT-Rは、「R●●」という形式名と、「GT-R」のネーミングだけ継承し、「スカイライン」とは切り離されることになった。
個人的にはセダンベースでグレードアップの制約がある中で世界のスーパースポーツに対抗していた「スカイラインGT-R」にこそ非常に魅力的に感じられるものがあり
「羊の皮をかぶった狼」という立ち位置こそが「GT-R」という名を世界に知らしめたと思っているので残念にも感じる。
とはいえ、スカイラインの呪縛から解放されたR35は、4人乗りにも、フロントエンジンにもこだわる必要がなかったはずで
どうせならミッドシップエンジンの2シーターでも作れば良かったのではないかと思うのだが、そこは「スカイライン」の名は取れても国産屈指の高出力エンジン、アテーサet-sの抜群なトラクションというR32以降のGT-R自身が創り出してきたイメージがそうさせてくれない印象がある。
ハイパフォーマンスとリーズナブルは相反するものがある、しかしスカイラインGTR はそれを見事に調和したから世界中に愛される車になった。これからもそんな素晴らしい車を開発できるように、日産には心からのエールを送りたい。
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